プランニングディレクター/コミュニティデザイナー・市村良平氏の農業観・農地観

市村 良平 氏

1986年生まれ。
鹿児島県内を中心に、地域や企業、コミュニティの持つ課題や資源を整理し、目的に向けて事業や活動を円滑に進めていくコンサルティングを行う。いわゆる、まちづくりと呼ばれる仕事(計画策定、イベント企画、 ワークショップ実施、人材育成など)と企業や個人をサポートする仕事(店舗等のマネジメント、普及促進 事業プロデュース、情報発信補助など)。中心市街地活性化に向けたタウンマネジャー業務、中山間地域の小学校跡地活用プロジェクトへの参画、市役所の庁舎の建替えに伴う市民参加型ワークショップのファシリテーションなどを手掛けている。

 

2011年に鹿児島大学大学院修了(建築学専攻:都市計画・歴史意匠)。株式会社丸屋本社マルヤガーデンズ事業部、一般社団法人鹿児島天文館総合研究所Ten-Labを経て、かごしま文化情報センター(KCIC)、鹿屋市にぎわいづくり協議会タウンマネージャーなどを経て現在に至る。

市村整材代表。株式会社サルッガラボ代表取締役。オープンハウスカゴシマ実行委員会委員。SILASU運営委員会副代表。鹿児島シティFM番組契約コメンテーター。など。

空き家再生まちづくり会議のファシリテーションを通して参画したプロジェクト「塩や、」では、ウッドデザイン賞2016ソーシャルデザイン部門、九州建築選2016奨励作品、第5回かごしま・人・まち・デザイン賞優秀賞を受賞。著書「空き家とワークショップとまちづくり」(高橋大輔監修『小さなまちづくりのための空き家活用術』(株式会社建築資料研究所、2017年)のほか、寄稿・講演多数。

 

 
市村氏がファシリテーションしているワークショップのようす。若者向けのワークショップ。100名を越える参加者と地域の未来について構想。
公民館で行った 「小学校跡の活用ストーリーを描く」というワークショップ
小学校跡地での光景
もともと教室だったスペースに設置した図書スペース
WorkshopとFactoryの違い
 

 

■農業がある地域は強いと思います

――いまのお仕事は多岐にわたるようですが、どのようなお仕事をされていますか?

市村:まちづくりをベースにしたコンサルティングのような仕事をしています。「中心市街地の活性化をやってほしい」とか、「男女参画共同社会を進めたい」というような行政からのオファーなどもあります。昨年度は、環境をテーマにしたワークショップも企画させてもらいました。鹿児島市では、「ゼロカーボンシティ」を掲げて、排出するCO2の量を2050年までに実質ゼロにするという目標を立てているのですが、それに向けたワークショップなどを請け負ったりしています。各地で対話の場づくりをやっていて、色々な地域に入り、まちづくりのお手伝いをする仕事です。

――元々、建築などがメーンでしたよね?

市村:大学で建築設計などを学んでいて、その中の都市計画という分野で、「地域をハード的にどう作っていくか」ということなども学びました。それを学ぶ中で、まちづくりやコミュニティデザインの分野の方々に出会って、影響を受け、そちらに舵を切っていった感じです。ハードだけ作るのではなくて、その中をどう使ってもらうか、地域の活動と連携していくか、場の経済を活性化させていくかなどを考えながらやっています。

――今のお仕事の中で、農業や食との接点は多いですか?

市村:食とか農業はけっこうあります。やはり、地方に行くと農家さんが「自分の作っている野菜を売りたい」とか、そういう声はよく聞きます。廃校を地域の拠点にするプロジェクトでは、そこでできる体験の一つとして、稲刈り体験や田植え体験をするというプログラムを企画することなどもありました。実際にそこで作っているものを地元のおばさんたちが加工して販売するような、そういうことも割とありますね。地元の食で地域の活性化につなげたいという話はわりと多いのではないでしょうか。ですから、生産者そのものというよりも、できたものをどう使うか、どう価値を付けて売るか、という話を考えることの方が多いと思います。

――生産物と、あとは過程でしょうか?

市村:過程?

――作る過程。たとえば、稲刈り体験であれば、刈り取った収穫物をコンテンツとするというのもありますが、体験という過程自体もコンテンツになっているわけですよね。

市村:はい。コンテンツそのものをみんなで作るみたいなことをやっています。

――そういう農業や食に関する話題などは詳しいですか?

市村:いいえ。ごはんは好きですが、詳しくはないです(笑)。ただ、ゼロかと言われたら、そうでもなく、商品開発の手伝いとかもしています。たとえば、地域で盛んに行われている養殖魚を使って加工品を作っている若手経営者の人と仕事をしていて「その商品がなぜおいしいのか」というのを、大学とタッグを組んで科学的に分析するときの橋渡しなどをするときもあります。

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この記事は、小川真如による個人研究「現代の農業観・農地観」の成果です。