パティシエ・武井一仁氏の農業観・農地観

武井 一仁 氏
1964年生まれ。
世界の三國清三氏オーナーシェフ「オテル・ドゥ・ミクニ」のもと22歳の若さで製菓長を務め、パリの五つ星ホテル「ホテル・リッツ」で修業。帰国後、「ミクニ・フェア」で国内外を飛び回った。タイのオリエンタルホテルで、国王や国賓にデザートを供したこともある。その後、フランス菓子の第一人者・河田勝彦シェフのフランス菓子店「オーボンヴュータン」で修業。2000年に栃木県足利市に「パテスリー ル・クール」をオープン。その後、「レストラン ル・クール」、「ル・クール ペイザンヌ」ほか、直営5店舗を手掛けた。自らを「包括的食育活動家」と称し、福祉授産施設による加工食品の開発・監修にも携わった。

 

 

■農地というのは、ただの景色にしかすぎなくて、とりたて関心のあるものではなかった

――農業観とか農地観ということでいきなりお話をお伺いするわけですが、何かございますか? 農業観、農地観というと堅苦しい感じがするのですが、農業に対するイメージだとか農地に対するイメージだとか。結構そういうのをご自身の経験の中から、育まれたりなどあると思うのですが……。

武井:僕は全く、畑違いな人間なわけですよね。

――農業とか農地に対して、何か思いとかイメージとか、たとえば抽象的な話でもいいですし、具体的な話でも構いません。何か捉え方が変わったなどということはありますか?

武井:それは変わりましたね。そこにある景色です。農地という、これは誰にとってもそうだと思いますよ。ある景色ですよね。そこにある、存在する景色だけど、とりたてて何かの関心の対象にはなってなかったと思います。

――無意識という感じですか?

武井:無意識、そう。ただの景色の一つで。もともと僕もそうですよ。農地というのは、ただの景色にしかすぎなくて、とりたて関心のあるものではなかったのですよね。だから、本屋さんに行って関心のある本をピックアップするのと一緒で、全くピックアップするものがない場所だったのです。

――本屋さんと一緒?

武井:本屋さんに行っても、いっぱい本があるではないですか。でも、自分の関心のあるものしかピックアップしないですよね。それと一緒で、誰も、ここだって、ここを通る人はみんなそうだと思いますよね。みんなの視界には入っているけど、とりたててそこに関心を持つということはしてないのではないですかね。

――武井さんも昔はそうだった、ということですね。

武井:もちろんそうです、全然関心がなかったです。

この記事は、小川真如による個人研究「現代の農業観・農地観」の成果です。